コラムー泥炭地
石炭の利用記録自体は古代から残ってるんですけど、本文中にもある匂いの問題とかで生活燃料としての質は薪や木炭に劣るため、デカい機械の動力としての蒸気機関やコークス製鉄法が開発されるまではそこまで利用されてきませんでした。
ヨーロッパ中北部、王国南西部にあたる気候のとこには泥炭土質の土地が多くあります。イギリスとかも。
泥炭とは樹木の死骸が土になり石炭になる成長段階の最初のもので、これが地層となり数億年圧縮されたものが石炭となります。化石燃料のあかちゃん。石炭化の段階によって地層の名前は分けられてて、本文中の「黒い宝石」と呼ばれたものは固まっているけど低品質な石炭「褐炭(かったん)」の一種です。いわゆる練炭の原料として利用されます。ダスカー半島で発見されたけど教会に禁忌指定された石油っぽいものなど、ちらほらと化石燃料の存在が匂わされるファーガスは、フォドラ統一戦争後教会の制約が薄くなってからそれをどう利用していくのか……。
一部の褐炭は実際に磨かれて黒い宝石としてアクセサリーに使用されています。「黒玉」「ジェット」と呼ばれているのがそれです。
真珠や貝殻と同じように、人類が宝飾品とした最古の素材のひとつです。有機物で、山での採掘や精錬の技術がいらないからです。天然で美しい真っ黒の光沢を示し、黒は強い力を感じさせる色であるため魔除けと考えられました。特にローマ帝国時代はみんなこぞっていろんな細工物に使い、中世キリスト教でもロザリオの数珠とかによく使われていたようです。
19世紀にイギリスのヴィクトリア女王がアルバート王配の喪に服した際に身に着けたことからモーニングジュエリー(喪に服する期間用の装身具)の定番となり、黒い喪服とともに定着しました。日本だと黒真珠が使われることが多い場面ですけどこういうのもあるんだよ。
小説裏話
後世に発見・整理された史料のかたちに擬製してわが伴侶リンハルトとイチャついてみました。
マヌエラ・カトリーヌ・マリアンヌの話の裏話でも述べた通り、ルートは不定、主人公先生も男女不定です。主人公先生がリンハルトとガルグ=マクに住んでいること、アッシュがガスパール城伯になっていること、ヒルダちゃんがアクセ作りに精を出していることだけが前提です。ただ、かつて禁足地だったあたりに「人形(セイロスの紋章製のゴーレムのことです)」が出てきたことを話すあたりでリンハルトが「(煤闇の章の)宝杯のときと似ている」と連想するのですが、煤闇の章は本編の世界線ではなかったことになってる物語なので、「過去のループの思い出がうっすら残ってる」みたいな感じにしてみました。
ちなみに、気付いた方もいらっしゃると思うのですが、ヒルダちゃんがペトラから預かってきた新種の「ダグザの作物?」というのはジャガイモ的なものです。気候と土質と農法的にジリ貧をむかえているファーガス地方に、ジャガイモと新農法が救いになれるのか、それとももうひと壁ふた壁あるのか……
風花雪月小説
奇跡の美酒
食文化テーマ短編。戦後、教師として復興を手伝う村で可能な限り理想のお酒を作りたいわ!とマヌエラがカトリーヌとともに各地酒ツアーしてエドマンド領まで行く(13000字程度)
カリード王アンヴァル会談録「キャベツ」
食文化テーマ短編。戦後、パルミラ王ことクロードがフォドラ統一政権の外交官のコンスタンツェとついてきたユーリスにキャベツの相談をする(13000字程度)
カリード王アンヴァル会談録「ライス」
食文化テーマ短編。「キャベツ」の続き。ヌーヴェル領の農地を苦しめる塩害対策にクロードがアジアの知恵をしぼる(11000字程度)
褪せぬ秋の日
食文化テーマ短編。戦後、レスターをまとめる立場になったローレンツが香辛料の流通について修道女メルセデスに相談する(10000字程度)
ヘヴリング文書―土壌編―
食文化テーマ短編。戦後、ガスパール領の地質調査に向かうリンハルトから先生に向けた連書簡(8000字程度)

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